第13章
トータルヘルスケアサポート①

身体と心の健康を守ることは非常に重要です。
栄養・食事、避難環境、脱水、衛生、そしてペットや生活環境も含めた「からだとこころのケア」、「災害時のトータルヘルスケアサポート」について紹介します。
大塚製薬株式会社
ニュートラシューティカルズ事業部
支援者の健康が、被災地を支える力に
災害支援者の皆様が、「備え」を通じてご自身のコンディションを維持することが、被災地を力強く支える土台となります。
日常生活の中での準備
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備蓄(ローリングストック):
ご自宅の飲料水や食料は、普段使いしながら備蓄量を維持するローリングストックを習慣化し、最低でも3日分、できれば7日分を確保しましょう。備蓄食品を選ぶ際は、常温で長期保存が可能で、過熱不要(お湯や調理が不要)、栄養バランスに優れている点などを考慮してください。
手軽にエネルギーや栄養素を補給できる栄養補助食品などの備蓄も非常に有効です。 -
体調管理(コンディショニング):
日頃からバランスの取れた食事と十分な睡眠、適度な運動を心がけ、免疫力を高めておくことが、いざという時の心身を支える基礎となります。
災害支援時に注意する事
災害支援の現場では、ついご自身の体調管理が後回しになりがちです。過酷な環境下では、脱水や栄養不足が疲労、集中力低下、さらには熱中症やエコノミークラス症候群などの健康リスクにつながります。
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水分補給の徹底:
トイレを気にして水分補給を控えると、脱水症やエコノミークラス症候群のリスクが高まります。喉の渇きを感じる前に、意識してこまめな水分補給を行いましょう。また、汗をかくような作業を行う際には、水分だけでなく塩分も同時に補給できるイオン飲料を活用するなど、熱中症対策も怠らないようにしましょう。 -
エネルギー・栄養素の確保:
災害時に食材の確保が困難になり、食事が主食に偏ると、タンパク質、ビタミン、ミネラル等が不足しがちになり、体調不良につながることもあります。また、朝食を抜くことは、熱中症リスクを高める一因にもなります。食欲がない時や食事確保が困難な時には、手軽にエネルギーや栄養素を補給できる栄養補助食品なども積極的に利用し、「しっかりと食べる」意識を持ちましょう。
大塚製薬ニュートラシューティカルズ事業部は科学的根拠に基づいた製品提供を通じて、地域の方々と共に健康維持・増進を推進してまいります。
株式会社大塚製薬工場
災害現場では脱水症にも注意
災害時の特殊な環境では脱水を引き起こしやすく、被災者のみならず、被災地を訪れるボランティアの方にも脱水症の危険が迫っています。
冷房設備が十分機能しない暑熱環境下の被災地において、食事や水・電解質補給も不十分なまま大量の汗をかき続けると、脱水が進行し熱中症のリスクが高まります。熱中症が疑われる症状(めまい・立ちくらみ、こむら返りなど)が現れた際には、熱さを避け、体を冷やすとともに、脱水を伴う熱中症にも効果がある経口補水液を活用しましょう。
断水等により安全な水の確保、適切な排水ができない場合、ノロウイルスなどの感染性胃腸炎が発生・拡大しやすくなります。感染性胃腸炎の症状である下痢・おう吐・発熱により体液を失い、脱水症になる可能性があります。作業時には感染対策を行い、感染性胃腸炎になってしまったら、経口補水液で水・電解質を補給しましょう。
経口補水液は脱水で不足した水と電解質を効率よく補給できるようナトリウムとブドウ糖の濃度が調整された病者用食品で、災害現場でも有効に活用できます。
大塚食品株式会社
災害時に考慮すべき栄養と食事
災害避難の際、避難開始からの時期により着目すべき栄養素は変わります。発生初期は水分とおにぎりやパンなど手軽に食べられる食品でエネルギーを補う必要があります。4日目以降はたんぱく質やビタミン・ミネラルの補給を意識した食事が必要です。
避難所の生活においては調理設備が限られるため、支援物資の中でもすぐに利用できるおにぎり、パン、カップめんなどの炭水化物が主な摂取栄養素となります。その一方で、野菜、肉、魚、乳製品などの生鮮食品は届きにくいこともあり、たんぱく質やビタミン、ミネラル、食物繊維が不足しがちです。カップめんなどは便利ですが、そればかり食べると塩分の過剰摂取にもつながるなど、避難生活での栄養には気を付ける必要があります。
避難が長期にわたる場合、高齢者にはエネルギーやたんぱく質摂取の必要性が高まり、高血圧、糖尿病などの基礎疾患を持つ人には疾病発症・悪化の予防のため、できるだけ塩分コントロールなどの食事管理が必要になります。また食物アレルギーを持つ避難者への配慮も必要になります。
災害時のライフラインは電気から順に復旧する場合が多いことから、電子レンジで手軽に温められる食品が便利です。また、塩分やカロリーがわかりやすいものや、アレルギー特定原材料等28品目を使用していないレトルト食品なども有用ですので、災害備蓄に限らず日頃から生活に取り入れてローリングストックしておくのもお勧めです。
参考:独立行政法人 国立健康・栄養研究所 社団法人 日本栄養士会 災害時の栄養・食生活支援マニュアル
NHK きょうの健康テキスト 2021年5月号
