第1章:身の回りの危険を知る
自然災害

日本は環太平洋火山帯に位置し、複数のプレートの境界にあります。そのため、地震や火山噴火が非常に頻繁に発生します。また、国土が南北に長く、周囲を海に囲まれているため、台風や豪雨、津波といった災害も多発します。一つの災害が他の災害を誘発することもあり、地震による津波や、豪雨による土砂災害といった複合的な災害が起こりやすいのが大きな特徴です。

日本の国土は、山地や傾斜地が多く、河川が急な勾配を流れています。この地形は、豪雨時に河川が短時間で増水し、洪水や土砂災害を引き起こす要因となります。特に都市部では、川沿いや埋立地に住宅が密集していることが多く、洪水や液状化現象による被害が拡大しやすい傾向があります。

日本の四季の変化も災害に影響を与えます。

夏から秋: 台風のシーズンとなり、暴風雨や高潮の被害が増加します。
冬: 日本海側や山間部では豪雪となり、交通網が麻痺したり、雪崩や屋根からの落雪事故が発生したりします。
春から夏: 梅雨前線や積乱雲による集中豪雨が、土砂災害や洪水を引き起こします。

社会的な脆弱性

日本の自然災害は、その地理的特性だけでなく、社会的な側面からも被害を大きくしています。

人口密集: 都市部への人口集中が進んでいるため、大規模な災害が発生した場合、人命被害やインフラの損壊が甚大になる可能性があります。
高齢化: 災害時に自力での避難が困難な高齢者が増加しており、避難支援や福祉的な側面での対策が不可欠となっています。

地震

地震は、プレートの動きによって地殻がずれたり、壊れたりすることで、大地が揺れる現象です。

地震の特徴

突発性: 事前予知が難しく、突然発生します。
複合性: 揺れそのものによる建物の倒壊や、家具の転倒・落下、液状化現象に加え、津波や火災といった二次災害を引き起こします。

地震における危険な場所

建物内: 地震による負傷者の多くは、倒壊した建物や転倒・落下した家具が原因です。特に、耐震性の低い古い建物、家具や家電が固定されていない場所は非常に危険です。
地盤が軟弱な場所: 埋立地や河川沿いの低地など、地盤が軟弱な場所は、揺れが増幅されたり、液状化現象が発生したりして、建物の沈下や傾斜を引き起こす可能性があります。
山間部や崖地: 揺れが土砂崩れや地すべりを誘発する危険性があります。

津波

津波は、海底地震などによって引き起こされる巨大な波です。

津波の特徴

速い伝播速度: 沖合ではジェット機並みの速さで伝わります。人が走って逃げ切ることは不可能です。
何度も襲来: 一度で終わらず、繰り返し押し寄せます。第1波より第2波以降の方が高くなることもあります。

津波災害における危険な場所

海岸や沿岸部: 津波の直接的な影響を受ける最も危険な場所です。釣りやサーフィン、海水浴をしている場合も、直ちに避難しなければなりません。
河川沿い: 津波は川を遡上して内陸部まで到達するため、海岸から離れていても危険です。
湾の奥: 湾の奥やV字型の地形では、波のエネルギーが集中し、津波の高さがより高くなる傾向があります。

台風・豪雨

台風や積乱雲による集中豪雨は、大雨と強風を伴い、広範囲に被害をもたらします。

台風・豪雨の特徴

広範囲性: 洪水や土砂災害、高潮、強風といった複数の災害が同時に発生する可能性があります。
予測可能性: 地震とは異なり、進路や強さがある程度予測できるため、事前の備えや避難が可能です。

台風・豪雨における危険な場所

河川沿い: 集中豪雨で水位が急激に上昇し、河川の氾濫や決壊が起こる危険があります。
崖地や山間部: 大雨で地盤が緩み、がけ崩れや土石流、地すべりといった土砂災害が発生しやすくなります。
地下やアンダーパス: 都市部では,排水能力を超えた雨水で,地下やアンダーパスが短時間で水没する危険があります。
強風を受ける場所: 暴風によって屋根が飛ばされたり、電柱が倒れたりする危険があるため、屋外の看板や倒れやすいものの近くは危険です。

高潮

高潮は、台風や低気圧によって海面が通常よりも高くなる現象です。

高潮の特徴

広範囲にわたる浸水: 台風の中心気圧が低いほど、また強風が海水を吹き寄せることで、海水面が上昇し、広範囲で浸水被害が発生します。
波浪害の複合: 高潮に加えて高波も発生するため、防波堤を乗り越えて海水が流れ込むことがあります。

高潮における危険な場所

海抜の低い沿岸部: 堤防や防潮堤があっても、高潮によって水が溢れ、家屋や道路が浸水する危険があります。
湾の奥や入り江: 湾の形状によって海水が集まりやすいため、高潮の被害が大きくなる傾向があります。
港湾施設: 船舶の転覆や設備の損壊が発生する危険があります。

火山噴火

火山噴火は、マグマや火山ガス、岩石が噴き出す現象です。

火山噴火の特徴

複合的な危険: 噴火に伴い、火砕流、溶岩流、噴石、火山灰、火山ガスといった様々な危険が同時に発生します。
長期的な影響: 降灰による農作物への被害や、航空機への影響など、長期にわたる影響を及ぼします。

火山噴火における危険な場所

火口周辺: 噴火直後の噴石や火山ガス、火砕流といった危険に直接さらされます。
火口から離れた地域: 火山灰の降下や火山泥流(火山の斜面を流れる泥や土石の流れ)によって、広範囲にわたる被害が発生する可能性があります。

豪雪

豪雪は、短期間に大量の雪が降る現象です。

豪雪の特徴

交通網の麻痺: 道路の閉鎖や鉄道の運休などにより、交通が寸断されます。そのため孤立してしまう集落が発生する可能性があります。
ライフラインへの影響: 倒木や電線の断線によって停電が発生し、暖房や通信が途絶える危険があります。

豪雪災害における危険な場所

屋根の下や軒先: 屋根からの落雪や、雪庇(せっぴ)の落下による事故が起こりやすいです。
雪が積もった屋根の上: 雪下ろし中の転落事故や、屋根の崩落といった危険があります。
急斜面: 雪崩が発生する危険があります。スキー場や山間部では特に注意が必要です。